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2008.09.30:フリータウン

2008.09.30:フリータウン

9月30日(火)。

ロイスとお金の話をしないといけない。一昨日、この家に着いてすぐにも少し話したが、ロイスは家賃、食費、その他洗濯などの身の回りの世話に関して一切お金をとろうとしない。

これではさすがにまずいので、先に食費などの滞在費として50米ドル渡し、足りなくなったらそのときに必ず言ってもらうよう約束をしてもらった。

しかし家賃支払いは最後まで拒否された。そのため僕がここを去るときにそっと置き逃げしようか迷っている。

そしてロイスと話していて、なぜみんなの言葉が聞き取り難いのかが分かった。聞き取り難いも何も、彼らは英語を話してなかった。

シエラレオネの人はクリオという一種のブロークンイングリッシュ(英語が地方で崩れてできた言語)を話すのだそうだ。

この国には10以上の部族が住んでいて、そのすべてがそれぞれの言葉を持っている。なので日常生活ではこのクリオがもっともポピュラーな言葉らしい。

そうと分かれば得意のボディランゲージだ。カナダでやっていたことと一緒だ。(僕は英語も苦手だ。)

ということでロイスとその弟・アルフレッド(12)、近所に住むフィッツという男の子、あと名前は知らないけどロイスのすぐ下の妹にクリオでの挨拶などを教えてもらう。

アルフレッドとフィッツは初対面から割りと絡んできたのに対し、ロイスのすぐ下の妹は思春期のためか俺を避けているように感じていたのだが、このクリオ講座で多少打ち解けてくれた。

朝10時頃シャノーさんが迎えに来てくれたので、覚えたてのクリオで挨拶をすると喜んでくれた。

さて、今日はもうひとつのキャンパス、フリータウン西部にあるローケル・キャンパスに見学へ。

「チンチョー」「チャイナ」「アパトゥ」

車でローケル・キャンパスに向う途中、頻繁にこれらの言葉を投げかけられる。

「チンチョー」は中国人、「チャイナ」はもちろん中国、「アパトゥ」はティムニという部族の言葉で「白人」のことだそうだ。

ここでは東洋人も白人も区別がないようだ。もっとも、東洋人の数自体少ないらしく、特に白人と区別するほどシエラレオネの人に認知されていないのかもしれない。

またシエラレオネにいる東洋人のほとんどが中国人で、中国人にいいイメージのない人間は「チンチョー」とか「チャイナ」とか叫びながらものすごい顔で睨んでくるし、そうでなくてもただのもの珍しさで叫ぶ人もいる。

一回シャノーさんが僕に罵声を浴びせてきた人に向ってものすごい顔で睨み返してた。僕と行動することで、シャノーさんにもストレスを掛けてしまうことに気づく。

街の人の視線にも慣れてきた頃、アスファルト舗装された道がいつの間にか赤土剥き出しのでこぼこ道へと変わっていた。小さな集落の中を突っ切る。

珍しそうに俺を見る人の大半は、こっちが手を振ると振り返してくれる。フリータウン到着初日、夜のフリータウンで感じたあの物騒な雰囲気は、昼にはひっそり影を潜める。

でこぼこ道を10分くらい進むと、白いテント小屋が見えてきた。ちょうど日本の小学校の運動会とかで来賓のおじさんとかが収まっているあのテントのような感じだ。

ここがローケル・キャンパスのようだ。授業中にも関わらずシャノーさんが教室に突入していく。迷惑じゃないんだろうか。しかし、先生のエマニュエルさんも快く迎えてくれ、子どもたちに紹介してくれた。

ローケルには現在、一番下の、小学1年にあたる学年しかないので、ここの子どもたちはゴッドリッチの子どもたちより好奇心を隠さない。もの珍しそうに、目をキラキラさせて僕を見ている。

授業が終わると、案の定大勢で俺を取り囲みしがみ付いて大騒ぎしてくる。口々に「アパトゥ」と叫びながら握手を求めてくる。

しばらくすると、徐々に子どもたちは「チョップ」と言い出し、しまいには「チョップ!チョップ!」の大合唱ははじまった。

「チョップってなんですか?」とシャノーさんに聞くと、「チョップ」とはクリオで「食べ物」のことらしい。

ワンパクに育ってるねとも思ったが、初対面の人間に食べ物を要求することが当たり前のようになっている状況に漠然とした恐怖を感じた。

まだ建設中のこのローケル・キャンパスは、昨日行ったゴッドリッチ・キャンパスの数倍の面積がある。シャノーさんのNGOは、ここにココナッツの樹を植えたり水洗トイレを作ったりしている最中だ。ちなみにココナッツの樹は一度植えたのだが、夜のうちにすべて盗まれてしまったため、再度植え直す計画だそうだ。

建設中のトイレを見せてもらう。そこでは4人の男性がボランティアとして働いていた。彼らのうちの一人は、先の紛争に政府軍の兵士として参加したらしい。屈強な体つきで、戦時中は隊長を務めていたと言っていた。

彼はとても穏やかで、覚えたてのクリオで挨拶すると笑顔で返事をしてくれた。で、横に座っていた彼の奥さんであろう人に挨拶したら無視されてしまった。

そのあと、ローケル・キャンパス近くにあるティムニ族の漁師のコミュニティを訪問し、シャノーさんのオフィスで資料を見せてもらい、掃除を手伝って帰路に着く。

別れ際シャノーさんに「帰ったら手を洗うんだよ。僕でさえ、たくさんの子供達と握手をしたあとは手を洗うからね」と言われた。たしかに、鼻水とかたくさんつけられたような気がする。