PEKINDEM

2008.09.28:フリータウン

2008.09.28:フリータウン

9月28日(日)。

丸1日、さらに2時間遅れで飛行機はロンドンヒースロー空港を出発。

乗客は僕以外東洋人ぽい人はいない。白人も3人くらいで、あとは全部黒人。なんか飛行機の中からアフリカっぽくなってきてわくわくする。

飛行機の中で、隣に座っていたシエラレオネ人の男性と仲良くなった。歳は僕と同じくらいか、少し若いくらいだと思う。名前をフォデイと言って、今までにMSF(国境なき医師団)の職員としていろいろな国へ派遣されたと話してくれた。

俺にパスポートを見せながらいろいろな国の話を聞かせてくれた。そのあと僕がはじめてシエラレオネに行くということを知ると、僕の入国カードに記入漏れがないかチェックしてくれた。

ルンギ空港が近づく。フォデイは「飛行機を降りたら空港を出るまで、僕について来い。僕は今までいろんな国へ行って、その度に入国のときたくさんの人に助けてもらった。だから今回は僕が君を助けるよ」と言ってくれた。

ルンギ空港に降り立つと、湿気を含みむせ返るような熱気に身体を包まれる。カルガリーはすでに夜はパーカーだけでは震えるくらい寒かったのに、ここは真夏のようだ。着ていたパーカーとダウンジャケットを脱ぎ、すでに汗ばみながらバスに乗り込むと空港建物へ移動。

入国審査を通り、荷物を回収して出口の方へ向かうと、手荷物検査をしているようだった。入国目的や滞在予定期間などを簡単に聞かれ、荷物のダンボールと引き裂かれたりしつつ無事検査を終えると、検査官が何か言いながら手を出してきた。

何だと尋ねるとここを出るには料金が必要らしい。しかも額は僕の気持ち次第ということだ。手持ちもあまりないので20米ドルくらい払っておいた。

ちなみにこのとき見ず知らずの男性(多分現地の人)が僕にぴったりついてきて、検査官の言うことを一生懸命通訳してくれた。英語を英語で。気持ちだけ頂いておいた。

ルンギ国際空港は、タグリン湾を挟んで首都・フリータウンの対岸にある。ルンギ空港からフリータウンへ渡る方法は、僕の調べた限りでは3つ。ヘリコプター、フェリー、そしてホバークラフトだ。

カナダを発つ前にシャノーさんと電話で話したとき、ホバークラフトの発着場合流しようということになったので、とりあえずホバークラフトのチケット売り場を探すことにしよう。

フォデイに「ホバークラフトに乗りたいんだけど、チケット売り場はどこ?」と尋ねると、今日はホバークラフトは運休していてフリータウンにはヘリかフェリーで行くしかないとのこと。

シャノーさんに電話してそのことを伝えると、「じゃあヘリポートまで行くよ」と言ってくれて、急遽ヘリに変更。ところがフォデイが「僕の友達が迎えに来てくれるから、フェリーで行かないかい?」と誘ってくれた。「一緒に来ればお金もかからないし、よかったら是非」というお言葉に甘えてしまうことにした。

それから二人で人混みをかいくぐり、フォデイの友人・ゾラの車へ急ぐ。途中、先ほどの無理やり通訳してきた男が「通訳料をよこせ」と言ってきて、断り続けていたら5人くらいに囲まれてちょっと冷や汗をかいた。

急がないとフェリーに間に合わないのでこれ以上足止めされるとまずい。全員に小銭を渡して解放してもらった。
汗だくでゾラの車までたどり着くと、挨拶もそこそこに車に乗り込んだ。

クラクションを鳴らし続け、真っ暗な道を走る。ゾラが「よく来たね」を話しかけてくれて、世間話をしながらフェリー乗り場へ向かう。道中、シャノーさんにフェリーで向かうことを伝えるため電話。

「何だって?!今からフェリーなんて、こんな時間にもうフェリーは動いてないし、フリータウンに着くのは明日になるよ?!」とかなり困惑した様子だ。

焦ってフォデイに「フェリーって明日の朝まで動かないの?」と尋ねると、すごい笑顔で「イエス!」と返答。そういうことははじめに言ってくれと思ったが、ここまで来たらもう引き返せない。

シャノーさんには「今友達の車の中に乗って、フェリー乗り場に向かっているところです。今から引き返してもらうのも申し訳ないのでこのまま向かいます。すみません。」と伝えると、シャノーさんは僕がさっき知り合ったばかりの人間と一緒にいると分かり、それはものすごい勢いで焦りだした。見かねてフォデイが電話を代わってくれる。

シャノーさんがものすごい剣幕で捲くし立ててるのが僕のところまで聞こえてくる。フォデイが自己紹介して、これまでの経緯や事情を事細かに説明してくれ、なんとか収まった。

フェリー乗り場に着くと直接フェリーに車を乗り入れ、近くに立ってた男性にゾラがお金を渡す。

僕がいくら払えばいいか尋ねるとゾラは「お前は払う必要ない。俺に任せろ」みたいなことを言ってニッと笑い拳を差し出した。なんかとても愛嬌のあるフレンドリーな男だった。

しかも今日は運よくフェリーがまだ動いていたらしく、あと30分くらいで対岸のフリータウンへ行けるらしい。
よかった。フェリーの中で二人と落ち着いて話すことができた。

フォデイもゾラもイギリスに留学していたことがあるみたいで、なんというか、教養のある人間の余裕みたいなものを感じた。

フェリーを降りると、シャノーさんと電話で連絡を取りながら移動。10分くらいで無事シャノーさんと合流。

車から飛び出してきたシャノーさんは想像していたよりもずっと小柄で、頭のてっぺんが僕の目線くらいまでしかない。

ニコニコ笑顔で走ってきて「いやぁ、心配したよ!」と迎えてくれた。さっきの口論が嘘のようにシャノーさんとフォデイはものすごい勢いで意気投合し、しまいには電話番号まで交換していた。

別れ際にゾラが「いつでも電話してこい。車でどっか連れて行ってやるよ」と言って番号を教えてくれた。ほんとに気さくでいい奴だ。

フォデイとゾラと別れ、シャノーさんの車に乗り込む。「いやぁ、本当に心配したよ。アフリカでは、誰も赤の他人を助けない。君が知らない人間と一緒にいると聞いたときはほんとに焦ったよ」と言われ、自分の危機管理意識のなさを反省した。

夜のフリータウンは、街灯もほとんどない(そもそもこの日は電気が止まっていた)ため真っ暗だ。明かりを得るためなのか、そこらじゅうで焚き火をしていて、その周りに人影がうごめいている。初日だから余計なのかもしれないが、物騒な雰囲気を感じた。

日付が変わった頃、シャノーさんが手配してくれた部屋に到着。ホストファミリーだと聞かされていたので、僕はてっきりおじさんとおばさんみたいのが出てくると思っていたのだが、出てきたのはロイスという女の子だった。あとで聞いたら22歳だそうだ。

とりあえず、もう疲れて寝たかったので、電気、水道はほとんどの夜に止まるということだけ聞いてシャワー(と言っても水道が止まってるのでバケツの水をつかうのだが)も浴びずに寝る。

蚊取り線香、虫除け、殺虫剤などのマラリア対策は万全にしておいた。横になり、長かった旅程を思い返す。はずがそんな間もなくいつの間にか寝ていた。